社会の中で、人と人との関わりを円滑にする“江戸しぐさ”
その基本にあるものは、相手への思いやりであると
その一 でお話ししました。
改まって「思いやりの心が大切ですよ」と言われると
道徳の教えのような 仰々しさを感じますね。
小学校なら『今週の目標』と称して看板が上がったりしそうです(笑)
当時、江戸しぐさの数々は 各商家に伝わる門外不出の未公開の処世術といった扱いだったようです。
そう言うと、ますます重要な規律のように聞こえてきますが
ところが実際には、江戸時代では“江戸しぐさ”は 特別な規則や規律というよりは
むしろ、常識に近いものだったようです。
江戸しぐさは 商人達の生活の中で、出来て当然、当たり前の行動。
きっと、幼くして商人に成るべく 丁稚奉公に入ると
朝、目覚めてから 夜 布団に入るまで、生業のなかで しっかり体に染み付くように教え込まれたのでしょう。
思いやりだナンだと理屈をこねる前に、まず行動として現れるといった感じでしょうか。
江戸しぐさを、実際に日々の生活に取り入れようとしてみると・・
当たり前のように、“江戸しぐさ”を行動するには
状況に応じて、とっさに判断するという脳の瞬発力や正しい判断力が必要だという事がわかります。
人と人とが関わるその時に、瞬時に 判断しその場が丸く収まる行動
実は、それは非常に 人としての熟練度と経験が問われるものでもあります。
ちなみに・・
当時、江戸しぐさのできない大人は
田舎から出てきた「ポッと出」と見られて,スリに狙われたそうです。
江戸しぐさが出来ないくらいだから、周りに気遣いの出来ない “ぼんやり”だと思われたんでしょうね。
最後にもうひとつ。
江戸しぐさの中には、煙草に関するものも有りました。
【喫煙しぐさ】
江戸では たばこは同席した相手が吸わなかったら自分も吸わないのがルールでした。
昔から,喫煙のしぐさには不文律があったようで、むしろ 禁煙などとあえて貼り紙するのは野暮と思われていたようです。
料理屋などで相客に気づかずに喫煙していると,店のほうからで「根付け(今のストラップのような物)をいただいてよろしいでしょうか」と預かりにきたり、また,灰皿がないところでは喫煙してはいけなかった。
これが江戸っ子の常識だったようです。